レオのオレオ
「《召!雷!符!》」
はげしいスパークが炸裂した。瞬間、駆け出す影が2つ。
「ルルナちゃん!にげるよ!」
巫女装束の娘がグリマルキンの少女の手を引く。グリマルキンの少女は惚けた顔で手を引かれるままについていく。眠りの呪いだろうか。
「おふざけが過ぎるぞ…ホノカ」
逃げる2人を睥睨するコートの男…男の周囲に漂う矢は、2人へ向く。
「止まれ。『アルテミス…』」
「止まれないなら、止まれるように助けてあげますよ〜」
こちらも眠そうな少年…しかしそれはマジックの効果では無いであろう、気だるげな少年。
「《デスペラード》」
明らかな2つの害意。夥しい凶弾。
殺意が2人の少女に射出される瞬間、赤いドレスが舞い降りた。巫女装束の娘は手を伸ばし絶叫する。
「エレナちゃん!!!」
「行きますわよ!『タラリア』!!」
危機一髪…空から現れた赤いドレスの少女が、グリマルキンと巫女を連れ行く。少女3人空の旅。
「チッ、メスガキどもが!《闇の波動》!」
「あぶないよ!《暴嵐符》!」
「ねぇホノカ飛ぶ時にそれやめろってホノカァァアオエエエエ気持ちわるぅゥ!!!」
暴風に飲み込まれながら、3人の少女の姿はあっという間に見えなくなった。撒き散らされる吐瀉物は赤ドレスの子のものだろうか。
「あのロシアのガキも仲間なのか?無駄なことを…」
コートの男は不快そうな様子を隠そうとせず、少女たちの消えた空を睨みつける。
「追うぞレオ────」
「《ラビュリントス》」
突如、壁がそそり立つ。まるでコートの男を閉じ込めるかのように。まるで、追わせないかのように…
──まだ仲間が居たのか?不意をついて俺とレオを足止めする段取りか?しかしラビュリントスをするならエレナが現れた瞬間だろう────そんなことより新手は?誰だ?あの時の女か?花梨か?────敵は…?
「貴様…死にたいのか」
取り囲む魔法の迷宮の主へ…最大の殺意を。コートの男は、おもむろに怒気をはらみ静かに宣告した。
「レオ」
「シキガミさん…」
突き刺すような怒りを全身で受け止め、少年は見据える。
「やっちまうぜ。恨むなよ」
少年は敵対する。